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今回のテーマは、金融商品取引法のメインともいえるものです。金融商品取引業者(外務員)と顧客(投資家)との関係において、時系列的に場面を見ていきます。

基本は、やはり顧客(お客さま・投資家)の保護です。
合言葉を2つ、用意しました。

12と12は、PT TIME(ピーティー・タイム)・・・12PT(ポイント)と12時間(こちらは別テーマで登場します)
書面1年、引受け信用6ヶ月 ※どの項目の件なのかチェックしてみてください。

各項目の学習においては、(下にあるような)時系列的な流れをイメージしてください。

金融商品取引法のイメージ画像


取引態様の事前明示義務

金融商品取引業者等は、顧客から(有価証券の売買・店頭デリバティブ取引の)注文を受けた時は、あらかじめその顧客に対して

  • 自己がその相手方となって当該売買・取引を成立させるのか(仕切注文)
  • 又は、媒介し、取次ぎし、若しくは代理して当該売買・取引を成立させるのか(委託注文)

の別を明らかにしなければならない。

お客さまから「聞いてないよー」では困るわけですね。トラブルの元です。顧客保護が第一ですが、業者側からするとリスク管理でもあります。
はい、問題を少しやってみましょう。

⇒ 練習問題

適合性原則の遵守義務

いちばん基本的なことです。適合性の原則、と言われるヤツです。(ただし例外があります)

金融商品取引業者は、金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当と認められる勧誘を行って、投資者の保護に欠けることのないように業務を行わなければならない。

⇒ 練習問題

例外とは・・・相手がプロ(特定投資家=あとから出てきます)の場合です・・・そんなの(お互い)知ってて当たり前ですよね、リスクも十分に分かった上で投資するわけですから、ということです。
※そんな時は、相手が特定投資家の場合は、適合性の原則は、適用除外となります

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ただし、相手がプロ(特定投資家)であっても、適用除外とならない行為規制があります。

  • 断定的判断の提供等の禁止
  • 損失補てん等の禁止

※この2つ、大丈夫ですね。お互いがプロであっても、「これは絶対儲かりまっせ」とか「あなたにだけ損失補てんしますから」というような行為は絶対にダメ=適用除外、とはならない=必ず守ること、というわけです。

書面交付義務と説明義務について(大事です)

まず、面白い規定を・・・書面の記載事項については、8ポイント以上の大きさの文字・数字で明瞭かつ正確に記載、となっています。
そして、クーリングオフの規定の適用の有無についての記載は、12ポイント以上にしなさい、となっているのです。

目立つようにしなさい、というわけです。

※実際の印刷した書面と、サイト上での文字の大きさは違いますが、試しにこのサイトで8ポイント12ポイントを使い分けてみると・・・
(ただしPC・スマホ等の機器側で表示画面の大きさを調整している場合はだいぶ誤差があるかも知れませんが)

⇒ 8ポイントとは、この大きさです。⇒ 12ポイントとは、この大きさです。

※本サイトは元々(全体を)12ポイントで表記してあります。要は、クーリングオフのような大事なことは、区別しなさい、目立たせるようにしなさい、ということです。

お客さまが、後から見直した時に目に付かないように、書面の隅っこに小さな文字でこっそり書いておく、なんてことをしてはいけません、ということですね。

⇒ 練習問題

次は、契約締結と契約締結の書面についての話です。

契約締結前の書面交付義務

要は、どんなリスクがあって、損失が発生する可能性もありますよ、とか・・・支払う手数料や業者への報酬はいくらですよ、ということなどを契約締結前(商品の購入前)に、お客さまに理解・納得していただきなさいよ、というものですね。

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あまりいいたとえではないかも知れませんが・・・

業者からみて、顧客(お客さま・投資家)は素人です。
特に高齢の方だと、だんだん認知症が始まったりもします。
説明して、契約した時には正常であっても、だんだんと歳をとって何年かした時に、認知症になったりして、この商品を購入した覚えは、ない!
業者が勝手にしたんだ、とか(身内に向かって)嫁の○○が勝手に契約したとかお金を使ったとか、トラブルも十分に予想できる世界です。

そんな(お互いの)リスク回避の意味からも、書面の交付説明、というのは重要になってくるのです。

「きっちりと書面を渡して、説明をする」というスタンスは、実務でも極めて大切です。

金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとする時は、あらかじめ顧客に対して、

  • 金融商品取引契約の概要
  • 手数料・報酬など顧客が支払うべき対価に関する事項
  • 顧客が行う金融商品取引行為について、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがある時は、その旨
  • その他(たくさんあります)
  • もちろん、クーリングオフについて記載する時は、12ポイント以上の大きさの文字・数字で明瞭かつ正確に記載、です

を記載した書面(契約締結前書面)を交付しなければならない。(ただし、例外規定あり)

⇒ 練習問題


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※例外規定(書面の交付義務が適用除外されるケース)は以下の4つです。
(目論見書についての詳しい説明は別記事にて)

  • 金融商品取引所に上場されている有価証券(カバーワラント等を除く)の売買等(デリバティブ取引・信用取引等を除く)については、過去1年以内に上場有価証券等書面(包括的な書面)を交付している場合
  • 過去1年以内に当該顧客に対して、同一内容の金融商品取引契約について、契約締結前交付書面を交付している場合(過去1年以内に購入した商品と同じ商品を購入する場合のこと)
  • 顧客に対して、契約締結前交付書面に記載すべき事項のすべてが記載されている目論見書を交付している場合
  • すでに締結してる金融商品取引契約の内容を一部変更する金融商品取引契約を締結しようとする場合で、顧客に対して、契約変更書面を交付している場合

⇒ 練習問題

【記載内容の説明について】

書面を交付するだけでなく、説明も(相手の状況に合わせて=商品購入経験者か、初めて(初心者)か、一回の説明でピンときている様子か、そうでもないか・・・)きちんとしなさいよ、というものです。

顧客(お客さま・投資家)にも、経験年数、理解力・判断力・・・いろんな方々がいらっしゃいますから。
一種試験の範囲に入ってきますが、実務でも大切なことですので、ここできっちりと押さえておきましょう。

⇒ 練習問題

次は、実際に契約する時の書面交付についての決まりです。

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実は、契約時の書面交付については、例外規定で交付しなくてもいいというのも認められています。

契約前に書面を交付したら、契約までの間に(それなりの時間・期間がありますから)、聞いた説明を思い出しながら、じっくりと書面をみて、その上で商品を購入する・契約するという判断を選択するでしょうから、契約するという意思表示の時は、リスクについても十分に理解できている、という考え方なのでしょうね。

契約締結時の書面交付義務

金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立した時は、遅滞なく、書面を作成しこれを顧客に交付しなければなりません。

遅滞なく、です。締結前は、あらかじめ、でした。あらかじめ、と、遅滞なく

現実には、銀行の人などに集金に来てもらって定期預金をすると翌日とか翌々日に、定期預金証書が届いたりします。
いっしょですね。

商品購入(契約成立)した時は、後日に証拠書類等が届けられる、という形です。それが、遅滞なく、という世界です。

⇒ 練習問題

断定的判断の提供による勧誘の禁止

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この株、絶対、上がりますよ。

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マジっすか?

こんなの、絶対やっちゃダメ!というのは理解できますね。

  • (上記の例のような)断定的判断の提供による勧誘は禁止
  • 売りの場合も、買いの場合もダメです。禁止
  • 結果的に的中してもダメ。やはり違法です
  • 確定していない配当や新株の発行についても、断定的判断の提供による勧誘は禁止

⇒ 練習問題

虚偽の表示の禁止・虚偽告知の禁止

ウソの表示をして、ウソのことを言って、投資者を惑わす、誤解を与える、投資判断に重大な影響を及ぼしてしまう・・・当然、あるまじき行為です。

金融商品取引業者又はその役職員は、有価証券の売買その他の取引において、虚偽の表示をし、又は投資者の投資判断に重大な影響を及ぼすような重要事項について誤解を生ぜしめるような表示をすることは禁止されている。

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  • 勧誘行為がなくても、適用される
  • 表示は、口頭、文書、図画、放送、映画等が含まれる
  • 必要なものを欠くという不作為にも適用される(漏れていてもダメということ)
  • 故意・過失の有無も関係なし。そもそも、そんなことをしちゃダメ!ということですね

⇒ 練習問題

顧客の勧誘受諾意思確認義務及び再勧誘の禁止

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いろいろ考えたけど、この前の金融商品は止めときます。また、いつか別の機会にでも考えます。

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えーっ? そんなぁ?
この金融商品はいいですよぉ! 絶対、お薦めですぅ!

金融商品取引契約締結について、その勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認しないで勧誘することは、禁止されています。

また、上記の例のように、取引契約を締結しない旨の意思表示をしたにもかかわらず、当該勧誘を継続することは、禁止されています。(再勧誘の禁止)

⇒ 練習問題

損失補てん等の禁止

損失補てん・・・意味大丈夫ですね。顧客が購入した金融商品で、損が発生した場合に販売した業者側がそれを穴埋め(補てん)するということです。(昔は、お得意さまなどに普通に行われていました)

今は、当然、ダメ!ということになっています。

損失保証・利回り保証 損失補てんの申込み・約束 損失補てんの実行
損失が発生した場合や、予想通りの利益が出なかった時に、補てんすることを、あらかじめ(契約の時などに顧客に対して)業者側が申し込んだり、約束したりする行為 実際に損が発生したりした時に、業者側が顧客に対して、補てんを申し込んだり、約束したりする行為 すでに損が発生した顧客に損を補てんしたり、利益を追加するために、実際に財産上の利益を提供する行為
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第三者を通して行うのも、アウト!です。禁止されています。
奥さんなどに利益を提供するとか、関連会社などに補てんするといったようなケースです。

それともう一つ・・・
※ 業者側は、実際に実行しなくても(実際に利益を提供しなくても)、顧客に対して申し込むだけで禁止行為に該当します。ダメです。アウトです。

じゃあ・・・

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おたくの金融商品で損しちゃったので、補てんしてくれない?

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この場合・・・無視するか、「ふーん、このお客さまは、こんな人なんだ」と思うだけなら・・・
申し込んだ人も、業者も、何のお咎めもありません。

お客さまが、補てんを要求して、金融商品取引業者にそれを約束させた場合は、処罰の対象となります。アウト!です。
業者側が応じることはあり得ないと思いますが・・・

⇒ 練習問題

広告規制について

金融商品取引業者等は、広告その他(法律で決められている広告に類似する行為=郵便、FAX、電子メール、ビラ・パンフレット配布など)をする時は、

  • 当該金融商品取引業者等の商号、名称又は氏名
  • 金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
  • 当該金融商品取引業者等の行う金融商品取引業の内容に関する事項で、顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの(として政令で定めるもの)
  • ※(その重要なものとして)たとえば、手数料等がある

を表示しなければならない。

⇒ 練習問題

クーリングオフについて(書面による解除)

実は、(原則的には)金融商品にはクーリングオフは適用されません。保険商品などにはクーリングオフの規定があったりしますが。

クーリングオフについて文字の大きさでの12ポイントについての項目がありますから、クーリングオフそのものが必ずあるような感じがしますが、注意してください。

金融商品取引法上のクーリングオフといった場合は、対象となる金融商品取引契約は、投資顧問契約、だけです。
(契約に係る書面を受領した日から起算して10日を経過するまでの間、書面により当該金融商品取引契約を解除することができます)
※覚えなくてもいいと思います。ただ、頭の片隅には入れておいてください。

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繰り返しますね。
上場有価証券や投資信託などの一般的な有価証券の売買取引などは、クーリングオフの規定の適用はありません。

⇒ 練習問題

(金融商品取引業者が)引受人(となった場合)の信用供与の制限

金融商品取引業者が、有価証券を引き受けました。・・・その有価証券を売却する場合において・・・
すぐに売却してもいいのですが、・・・(買主に対して、お金を貸し付けてまで)すぐに売却しては、ダメですよというものです。
では、その「すぐ」がいつまでなのか?ということです。

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プロとしていろんなリスクも考慮して有価証券を引受けたのに、さっさとそれをお客さまに販売すれば、リスクをお客さまに転嫁するようなものでもありますね。
ただ、商品そのものが良ければ、欲しいというお客さまはお求めになられますし、それなりに判断して商品を購入するかどうかを選択されますので問題はありません。ここまではOKです。

それを、お客さまにお金を貸してまで売り込む、というのは・・・しかも引受けてすぐに・・・いかがなものか、ということなのでしょうね。

そのボーダーラインが、6か月ということです。

書面1年、引受け信用6ヶ月

⇒ 練習問題

さあ、本ページのいよいよ最後です。あと少し頑張ってください。

担保(貸付)同意書の徴求

お客さまが購入して金融商品取引業者が占有している有価証券やお客さまから預託を受けた有価証券を担保に供したり、他人に貸し付けたりする場合には、(顧客から)書面による同意を得なければならない。(電子的方法も可)

⇒ 練習問題