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外務員試験を目指す人がまずは勉強するのが金融商品取引法です。どちらかといえばこれまで触れたことのないような概念です。
(民法や憲法といった概念に比較して)

外務員が遵守すべき金融商品取引法では、投資者の投資判断に十分に貢献できるようにいろいろな情報を開示させることを義務付けています。
それが企業内開示(ディスクロージャー)制度です。

大きく2つの市場における開示があります。

発行市場における開示制度 流通市場における開示制度
募集・売出しが行われる有価証券についての開示 日々変動する金融商品に関して継続的に開示するもの
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企業内開示の対象となる有価証券は、

  • 1.(基本的には)募集・売出しが行われる有価証券
  • ※ただし、国債・地方債・金融債・政府保証債・流動性の低い一定の集団投資スキーム持分等については対象外
  • 2.資産流動化に係る有価証券、投資信託の受益証券及び投資法人の発行する投資証券
  • ※特定有価証券といいます。・・・あの特定有価証券とは別です

あと一つ重要なことが・・・開示書類が本当に正しいものかどうかを担保するために
金融商品取引法上の会計制度及び公認会計士又は監査法人による監査証明制度が用意されています。

発行市場における企業内容開示制度

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次の語句を覚えて(注意しておいて)ください。
有価証券届出書 ・内閣総理大臣 ・目論見書 ・届出目論見書の交付

※有価証券の発行・・・発行会社が行う・・・それを募集・売出しするのは?・・・金融商品取引業者

募集・売出しに際しての有価証券届出書

下の図を見てください。有価証券の発行会社と、それを募集・売出しする金融商品取引業者との関係と重要語句についてのイメージ図です。
○○株式会社の株を発行するのは、○○株式会社です。それを募集・売出しするのが、○△証券会社などです。

有価証券届出書のイメージ図



(そもそも)有価証券の募集・売出しの時は、発行者が当該募集又は売出しに関して、内閣総理大臣に届け出をしているものでなければ、行うことができません。・・・有価証券届出書を提出する

届け出をすれば、(金融商品取引業者・外務員)は、募集・売出ししようとしている有価証券について、投資勧誘ができるようになります。
※販売資料や目論見書を使って、外務員は(お客さまに対して)勧誘ができる、ということです。

実際に、有価証券を取得させたり、売付けたりするには「効力発生」が必要です。

(有価証券届出書の届出・効力発生前勧誘行為ができる ⇒ (効力発生取得させたり・売りつけたりできる

目論見書とは?

目論見書とは、有価証券の募集若しくは売出しの際に、発行者の事業やその他の事項についての説明を記載する文書です。

目論見書イメージ図



目論見書をお客さま(投資者)に渡したり、使って勧誘したりするのは、金融商品取引業者(外務員)ですが、発行するのは、元々の有価証券を発行する会社になります。・・・注意してください。

金融商品取引業者は、有価証券を募集又は売出しにより取得させ又は売り付ける場合には、目論見書をあらかじめ又は同時に、投資者に交付しなければなりません。・・・交付目論見書

※例外・・・相手が適格機関投資家の場合と、既に同一の銘柄を所有している者やその同居者が既に同じ目論見書の交付を受けている場合などで、当該目論見書の交付を受けないことに同意している場合

※逆に、投資者から請求があった場合は、直ちに目論見書を交付しなければなりません。・・・請求目論見書

いずれにしても、投資者保護の観点から考えてください。

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あと1つ、重要事項を・・・
既に開示が行われている有価証券の売出しについては、届出は不要であるが、目論見書の交付は必要です。

⇒ 練習問題

流通市場における企業内容開示制度

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有価証券報告書(年次報告)・・・1年に1回、四半期(半期)報告書・・・3か月ごと、6か月ごと、臨時報告書・・・随時で写しを金融商品取引所に提出、を覚えておきましょう。

下のイメージ図を見ておいてください。

有価証券報告書のイメージ図

有価証券報告書

通常の会社では、事業年度(決算)が終わると決算書を作成します。事業成績の株主への報告や金融機関や官公庁へ提出したりします。

有価証券を発行している会社が、決算書と同じような書類を内閣総理大臣に報告するものが有価証券報告書だと考えてください。

当該事業年度ごとに、その事業年度が経過した後3か月以内に、内閣総理大臣に提出しなければなりません。
(やむを得ず延期する場合は内閣総理大臣の承認が必要)

四半期報告書・半期報告書

四半期報告書は、有価証券報告書の提出を義務付けられている上場会社等で、その事業年度か3か月を超える場合(通常は1年です。1年決算です)、3か月ごとに区分した各期間ごとに、四半期報告書というものを、45日以内に、内閣総理大臣に提出しなければなりません。

半期報告書は、四半期報告書を提出しなければならない会社以外の会社が、6か月を超える場合に半期ごとに提出する報告書です。(こっちは覚えなくてもいいかと思います)

臨時報告書

有価証券報告書の提出が義務付けられている会社だけですが、内閣府令で定める一定の場合に、その内容を記載した臨時報告書を、遅滞なく内閣総理大臣に提出しなければなりません。

【一定の場合とは】

  • 主要株主の異動、代表取締役の異動
  • 重要な災害の発生、訴訟
  • 合併、事業の譲渡・譲受
  • 破産手続き開始申立・更生手続開始申立
  • 提出会社の財政状態・経営成績に著しい影響を与える現象(重要な後発事象)の発生
  • ・・・・・

臨時報告書は、・・・
※遅滞なく、です。3か月とか45日といった締め切り日はありません。遅滞なく、です。

※そして、さらに、遅滞なくその写しを金融商品取引所等に提出しなければなりません。

合言葉 臨報(リンボー)ダンスで遅滞なし、ついでにコピーも遅滞なし リンボーダンスで遅滞なく(素早く・スピーディに)取引所と書かれた棒(ポール)をくぐっている自分の姿をイメージしてください。

親会社等状況報告書

親会社などの関係会社との間における報告書についてです。上場会社があります。毎年毎年、有価証券報告書を提出します。
その親会社等が有価証券報告書を提出していない会社の場合、どうなると思いますか?

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親会社等が有価証券報告書の提出義務のない会社でも、子会社等に上場会社等があって有価証券報告書を提出している場合には、自動的に「親会社等状況報告書」の提出が義務付けられています。

親会社等状況報告書は、親会社等の事業年度終了後3か月以内に、内閣総理大臣に提出です。
(公衆の縦覧に供されます)

親会社の株式の所有者別状況及び大株主の状況、役員の状況、その他計算書類など。
・・・

この後で勉強する5%ルールにも関連しますが、要は、株主の状況やその構成割合などに変動があった場合は、ちゃんと報告しなさいよ、ということですね。

公衆縦覧

一定の書類については、一定の場所に備え置かれて、書類ごとに定められた一定の期間、公衆の縦覧に供されます。

企業内容開示制度の電子化

金融商品取引法の改正により、紙ベースでの報告・届出から、どんどん電子化の流れになっています。オンライン化、です。

有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書、有価証券届出書、公開買付届出書、大量保有報告書などの開示書類はオンライン化されています。

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この開示用の処理組織のことが、EDINET(Electronicx Disclosure for Investors’ NETwork)と呼ばれるものです。

開示書類をEDINETで提供した場合には、その写しを金融商品取引所等(大量保有報告書などは、金融商品取引所の他に発行会社にも写しを)に送付するものとされています。

金融商品取引法上の会計・監査制度

これは、マーケットに対しての検証行為です。会計・監査といっても、通常の上場会社等の顧問となっている会計監査人や監査法人といったようなものではありません。

あくまでも第三者的にチェックする、という仕組みです。

監査対象と特別の利害関係を持たない公認会計士や監査法人が共通の基準(監査基準)に従って検証するものです。

まとめ

有価証券届出書と有価証券報告書・・・違いが分かりますね。ともに、有価証券の発行会社が行います。ともに、相手が内閣総理大臣です。
前者が、株式を発行する時(発行市場)、後者は毎年毎年、決算報告書のように成績などを報告するもの・年報的なものでした(流通市場)。

証券外務員試験合格を目指す方へのアドバイスです。テキストを読んだら(学習したら)あとは、練習問題を繰り返し×反復で、しかも早口で読んで(頭の中で声を出して)ください。

まとめとしての練習問題です。

⇒ 練習問題