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以前(金融商品取引法・その9)で、金融商品取引業者と顧客(投資家・お客さま)との関係についての行為規制を勉強しました。

今回は、金融商品取引業者と市場(マーケット)との関係について、そこでの行為規制についてみていきたいと思います。
下の図の右側の関係です。

行為規制のイメージ図



この間での規制をすることで、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資する・・・という金融商品取引法の目的に貢献するという観点からの発想を心掛けてください。

フロントランニングの禁止とは?(前に走り出すこと?)

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フロントランニング・・・顧客からの注文を受けて、その情報を元に、同じ銘柄の売買を先に成立させるものです。言うなれば、先回りして儲けることができます。しかもノーリスクです。

Aさんから注文・・・B社の株を1万株購入・・・成行注文
その取引前に、自分がB社の株を1万株とか5,000株購入。そして値段が上がったら・・・
自分の1万株とか5,000株をAさんに(自分の取得価格よりも)高い価格で売却。

リスクゼロで、差額分が儲け、となります。

お客さんは、本来できていた価格での購入ができなくなり、余計なコスト負担を強いられることになります。
練習問題で理解・マスターしておきましょう。

⇒ 練習問題

とんでもないことをするヤツがいるのでしょうね。顧客に対しての誠実義務に違反するものです。

無断売買の禁止

金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、あらかじめ顧客の同意を得ずに、当該顧客の計算により有価証券の売買その他の取引等をすること(無断売買)は禁止されている。

(※顧客の計算・・・お金の元が顧客の財布ということ)

じゃあ、後から顧客の承諾(追認)を得ることができたらセーフ?・・・ノーです。
後から承諾を得る行為も、取引禁止の中に含まれます。

⇒ 練習問題

作為的相場形成の禁止

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注文を受けた時に、この注文は何かしら怪しい。ひょっとしたら・・・
(相場操縦で)作為的な相場がつくられようとしているのではないだろうか?

と感じたら、(取引を誘引するという主観的な目的がなくても)作為的な相場が形成されるおそれのある注文を受けることは禁止となっているのです。

※元々の相場操縦の禁止行為においては、「誘引目的」という主観的な要因が必要となっています。
誘引目的・・・売買が活発に行われていると見せかけて、他の投資家を参加させようと企んで、ということです。

その主観的な要因がなくても、作為的な相場が形成されるようなおそれのある注文を受けてはいけません、という禁止行為です。

⇒ 練習問題

怪しいなぁ、といったものに加担してはいけません、ということですね。

信用取引の自己向い行為の禁止

※信用取引とは・・・自分を信用してもらって用意しているお金の残高以上に、買ったり・売ったりできるという取引です。(詳しくは一種試験・株式業務にて)

前に、フロントランニングの禁止で先回りしての行為について説明しました。顧客に対しての誠実義務に反するものでした。
これは、それに近いイメージです。ただ、信用取引ですから売買が反対の動作になりますけど。

⇒ 練習問題

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これをやられると、完全に顧客と金融商品取引業者の利害が対立することになります。金融商品取引業者が得をしたら、顧客が損をする、という形です。
顧客に対する誠実義務違反ですね。

役職員の地位利用売買の禁止

金融商品取引業者等の役員若しくは使用人は、いろんな情報を知り得る立場にあります。業界事情や各個別企業の動向、大口の買い注文や売り注文・・・一般の人に比べたらとんでもなく濃い情報を知ることができます。

そういった(知り得た)情報を元にして、自分で売買等をしたらダメですよ、というものです。当たり前と言えば当たり前ですね。

また、役員若しくは使用人(役職員)は、専ら投機的利益の追求を目的として売買等をすることも禁止されています。

⇒ 練習問題

金融商品取引業者と親子関係にある法人との取引禁止

通常の取引であれば、何にも問題ありません。それを・・・親子関係の会社という特別な関係から、通常の取引とは異なる条件で、取引の公正さを害するようなことをしたら、ダメですよ、ということです。

この文章だけでも、当然だよね、と理解できますね。
「あの人だけ特別扱い、ズルい!」ということです。NGです。

⇒ 練習問題

虚偽又は不実の表示の使用禁止

※この禁止行為は、「勧誘」といった行為そのものがなくても適用されます。

⇒ 練習問題

虚偽の相場の利用禁止

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今、相場がこんな風に動いていますよ、とウソの資料などを使って、有価証券などの売買を勧誘(誘引)してはダメです、ということですね。

⇒ 練習問題

風説の流布・偽計取引の禁止

昔、風雪ながれ旅という歌がありましたが・・・(某北島○郎さんの歌です)・・・風雪違い(風説)ですね。

⇒ 練習問題

相場操縦の禁止

相場操縦は、市場における価格形成を人為的に歪曲する行為、です。
(相場操縦を行った者は、それで損害を受けた者がいた場合には賠償しなければならない)

※この相場操縦の成立要件は、

  • その行為で(実際に)投資家が害される・・・必要なし
  • 利益獲得を目的にしている・・・必要なし
  • 市場の公正な価格形成を人為的に歪曲する意思のみで相場操縦となる

仮装売買

実際には権利の移転、金銭の授受をしない、「仮装(ウソ)」の売買。他人に誤解を生じさせる目的。
この誤解とは・・・たくさん売買されていて、人気の銘柄なんだなぁ、なんて思わせるような仕掛けとしての売買のこと。

とんでもないですね。相場操縦そのものです。

⇒ 練習問題

馴合売買

AさんとBさんが、「通謀して」売買を行うということです。

「俺が、○○の銘柄を○○○円で売却するから、それを○○○円で買ってよ」という形で、同価格で売買することを通謀して売買を行うことです。

⇒ 練習問題

空売り規制

有価証券を持っていないのに、「売る」ということを「空売り」といいます。相場操縦に利用されがちなため、禁止されています。

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有価証券を借り入れて売付け又は売付けの委託若しくは受託する場合も、空売り規制の対象となります。

※例外・・・信用取引・先物取引のように定型化されて、一定の規制方式が確立した取引は許されています。

⇒ 練習問題

まとめ

以上、みてきたような行為は相場形成において不公正なものであり、健全な資本市場の形成・機能発揮を阻害するものです。

外務員として遵守することはもちろんですが、その前に、試験合格のために確実に得点できるように反復×反復です。
練習問題へのチャレンジ、今すぐの復習なら記憶も薄れていません。自分に定着させてください。